成人T細胞白血病リンパ腫について
「白血病」の中でも、通常の種類のものとは違うものもあります。
成人T細胞白血病は成人T細胞白血病リンパ腫「ATLL(Adult T-cell Leukemia/Lymphoma)」あるいは成人T細胞白血病「ATL(Adult T-cell Leukemia)」と呼ばれます。
この白血病と名のついたがんが、他の悪性リンパ腫や白血病と違うのは、このがんは「ヒトTリンパ向性ウイルス1型(Human T-lymphotropic Virus Type I:“HTLV-1”)」によって病気がひき起こされる事です。
このがんの特徴として土地的にも、主に日本では九州を中心とした西南日本や紀伊半島、三陸海岸、北海道地方に多く見られ、また海外ではカリブ海沿岸や南米アンデス、中近東、アフリカなどの地域で多く見られます。
日本では約120万人、世界全体では約1,000~2,000万人の「ヒトTリンパ向性ウイルス1型(HTLV-1)」症状はないがウイルスを体の中に持っているいわゆる「キャリア」方がいると推定されています。
主な症状としては、リンパ節の腫れ、(リンパ節腫脹)、肝臓や脾臓の腫れ(肝脾腫大)、皮膚の病的変化、高カルシウム血症があります。加えて、もともと、細胞の中でも免疫担当として重要なT細胞が「がん化」するので、強い免疫不全の症状を示し感染症にかかりやすくなり、真菌、原虫、寄生虫、ウイルスなどによる日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)を高い頻度で合併します。
また、ATLL細胞の特徴として、抗がん剤が効きにくくなったりする性質が見られることがあり、化学療法に抵抗性を示す事があります。また見かけ上病気が良くなること(寛解)が得られたとしても、再発率は非常に高いと言われています。
先の免疫不全に加えて、抗がん剤が効きにくい事などから、ATLLにおいては予後は化学療法のみの治療では「完全寛解率」は約15・40%、生存期間の平均は約3・13ヵ月であり、その予後は不良とされています。
但し、最近の医療の発展により、同種造血幹細胞移植によるATLLの治癒も期待されるようになってきました。また高齢の患者さんや造血幹細胞移植の対象でない患者さんの場合にでも、化学療法と他の分子標的薬剤と呼ばれる薬物治療を組み合わせる事によって、徐々にではありますが、将来的に確実に改善すると期待されて始めています。