肺がんの手術
肺がんの手術のおもな目的は、病巣を切除するということですが、肺がんの場合腫瘍のできた場所の葉単位(肺の構成部分で、右肺が上、中、下葉で左肺が上、下葉となります。)で切除することが多いです。
もちろん侵された部分が広い場合、左肺全摘出とか右上中葉摘出といった範囲にもなります。
基本的には、部分切除といって腫瘍とその周りの正常組織の一部のみを切除します。
その、より広範囲の場合区域切除 といって肺葉をさらに細かく区分けした部分を切除対象とします。
その次に肺葉単位となります。その他肺門部、上縦隔の主に主気管支や気管に沿ってあるリンパ節を切除したりするリンパ節郭清術があります。
開胸の仕方
肺がんの一般的な手術では、横向きに寝た患者の肩甲骨に沿って、背中側から胸の側面まで40センチほど切開し、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間を器械で押し広げて手術する。肺がんの標準治療として確立されている。
様々な開胸法 | |
胸腔鏡下手術 | 3-4箇所の約1-3cmの傷 |
小開胸 | 肋間に沿った6-10cmの傷 |
腋窩開胸法 | 脇腹のたて約10cmの傷 |
前方腋窩開胸法 | 脇腹から乳頭下部の約15cmの傷 |
後側方開胸法 | 肩甲骨と背骨の間から乳頭下部にかけての傷(肋骨を一部切除する) |
胸骨正中切開法 | 正中部の喉の下からみぞおちまでの傷 |
胸腔鏡手術
開胸による手術は、肺がんの標準治療として確立されている反面、胸の筋肉を切断するため、治療後も痛みが長く続き患者への負担はかなり大きいといえます。
昔は、優秀な外科医ほど大きな皮膚の切開で徹底的にがんを切除するという外科治療を行ってきました。
しかし現在においては、胸腔鏡手術という先端技術を応用して患者さんにとって安全で、痛みや苦しみが少なく、入院期間も短くてすむという外科治療を提供することが重要になりました。外科医にとっては高度の技術を必要とする非常に難しい手術でもあります。
胸腔鏡手術は体の側面に2~3センチの穴を4、5か所開け、小型カメラ(胸腔鏡)や自動縫合器などの器具を差し込んで、カメラで映しだしたモニター映像を見ながら、器具を操作します。
通常の手術には体力的に耐えられない場合や、高齢の患者でも行える点も長所です。今まで患者さんが大きな傷の痛みに苦しんで、入院期間が一ケ月もかかっていた手術が、本当に小さい傷で1、2週間で退院するような状況になりました。