乳がんの原因
乳がんの原因すなわち、発生・増殖には、まず第一に体内で作られるホルモンに大きく関係があります。
そもそもホルモンは代謝を調節することで、身体の機能が正常に働き、身体の状態がいつも良好になるように作用しています。
中でも女性ホルモンとしては、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。「エストロゲン」は子宮内膜と全身の細胞に作用し、女性の第二次性徴を促進させます。
また「プロゲステロン」は子宮内膜に作用し、女性の身体を妊娠に適した状態にします。
乳がんの原因はこの2つのうちの「エストロゲン」が重要な関わりをしています。
以下にあげるリスク要因の中でも、体内におけるのエストロゲンのレベルによって影響をされるものが多く見られます。実際に体内のエストロゲンの量が多い事、また、体外からの経口避妊薬の使用や閉経後のホルモン補充療法によるホルモンの摂取により乳がんのリスクが高くなるということも言われています。
他にも、生理的または生殖的な要因としては、初経年齢が早い、初産年齢が遅い、または出産歴がない、授乳歴がない、閉経年齢が遅い、ことがあげられます。
体格では高身長、閉経後の肥満、が要因としてあげられますが、閉経前乳がんについては、逆に肥満者で乳がんの発症が少なくなっています。
生活習慣においては、飲酒習慣により乳がんリスクは高くなっています。また逆に、運動による乳がんの予防効果は高く評価されています。
その他の食事ついては、脂質や野菜・果物、食物繊維、イソフラボンなどがよいとされていますが、確固たる根拠が証明されているものはまだありません。
遺伝によるものとしては一親等(自分の父母と子)内の乳がん既往歴、良性乳腺疾患(乳腺症、線維腺腫など)の既往、マンモグラフィでの高密度所見、電離放射線(紫外線や電磁波など)に多くあたる事も、乳がんの要因と言われています。
乳がんの危険因子
【ホルモン関係】- 初潮が早い
- 月経周期が規則正しい
- 月経周期が短い
- 閉経が遅い
- 出産未経験(含む未婚)
- 高齢出産経験がある
- 社会的な階層が高い(高学歴
- 太っている
- 家族に乳がんの人がいる
- 両性の乳腺疾患の既往
- 子宮体がん、卵巣がんの既往
- 長期間ホルモン補充治療を受けている
- 片側が乳がんになった
- 多量の飲酒
乳がんの危険因子詳細
【エストロゲンについて】乳がんの成長にエストロゲンが大きく関わっています。そのため若いときにエストロゲンがつくられる卵巣がない男性や、若いうちに両側ともの卵巣を摘出してしまった女性は、乳がんにかかる率が極めて少ないのです。
「初潮が早い 」「月経周期が規則正しい」「月経周期が短い」「閉経が遅い」などは月経に関係しており、すなわちそれはエストロゲンの関係となります。
月経の期間は女性の身体内でエストロゲンが多く作られ、体内のエストロゲン濃度が高くなります。そのため、乳腺もそれだけエストロゲンにさらされることになります。
また長期間のホルモン補充療法を必要とする「子宮体がん」「卵巣がん」「乳がん」の既往は、エストロゲン(またはプロゲステロンとの併用)を補充していますので、乳がんにかかりやすくなるので注意が必要です。
【出産経験について】
昔は、出生率は高く4人5人と子供を産む女性は多くいました。もちろん妊娠して出産するまでの間、月経はなくなります。そのため長い期間でみるとエストロゲンにさらされる期間はその分だけ短くなり、乳がんにかかるリスクも低かったと言えます。
現代社会の非婚やまた晩婚化、少子化などの女性のライフスタイルの変化は、女性がエストラゲンにさらされる期間が長く多くなったこととなります。
そして、それは単純に月経の回数だけではなく、授乳経験のない乳腺、また出産しても、乳腺炎や早期の職場復帰などで赤ちゃんに母乳を与えなかった場合なども、乳がんにかかる率は高いと言われています。
また妊娠により乳腺組織が急激に発達しますが、その時期が遅い高齢出産でもと乳がんになりやすいと言われています。
【脂肪と乳がんの関係について】
乳がんは田舎よりも都市田舎よりも都会の方に多い病気です。
一見関係ないように思えるのですが、「社会的な階層が低いよりも高い人」、「やせている人より太っている人」の方が、日常の生活の中で脂肪の摂取量が多いのです。
脂肪摂取量と乳がんとの関係はまだ立証はされておらず、今だに議論になっています。
しかしながら、閉経して卵巣機能が衰えた後、エストロゲンは脂肪組織中にある「男性ホルモン」が「女性ホルモン」に変換される形で体内で生成、供給されます。そのため脂肪については危険因子と考えておいた方がいいと思われます。
【既往歴について】
乳がんの経験者が再度乳がんになる確率は乳がん未経験者の約5倍と言われています。
片側が乳がんになった人はもう片方、また他の部位にも注意して定期的にチェックしてください。
また良性乳腺疾患である「乳腺症」でもその一部には乳がんとの関連があるとされているものもあります。
なので、乳腺症の経験がある人は注意が必要であると言えます。そして、乳がんでなくとも同じくエストロゲンを要因とする「子宮体がん」などにかかったことのある人は乳がんにかかる可能性は高いと考えられます。
【飲酒・喫煙について】
飲酒については、ときどき飲むだけの人や、日本酒1合またはビールやワイン1杯程度の量では関係はないと言われています。
ただし、多量の飲酒は大きく影響するとされており、1日平均2杯以上になる飲酒は、乳がんだけでなく肝臓などの健康の点でも身体への悪影響となります。
喫煙については外国で関係ないとされている国もありますが、日本の厚生労働省は、「閉経前の女性は喫煙により乳がんになるリスクが吸わない女性の約4倍になる」と発表しました。
自分以外の人のタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙であっても約2.6倍になるとされています。閉経後の女性についての喫煙と乳がんの関係ははっきりしていません。